走馬灯

高校生の頃、交通事故に遭った。

入院するほどではなかったけれど、自転車の後輪を軽自動車にハタかれて、自転車が吹っ飛び、わたしは地面に叩きつけられた。

たぶん地面に落ちるまで1秒もなかったと思う。

そのときに、走馬灯を見た。

走馬灯は一般的に死ぬ間際に見るものだから、正しくは走馬灯ではないのかもしれないけれど、過去のことが一気にフラッシュバックした。

なかにはそれまで完全に忘れていたようなこともあった。

事故に遭ったこと、それはそれで大変だったのだけれども、同じくらい、走馬灯を見たことにチョット感動していた。

そして数年後、ピンチのときに見る走馬灯というのは、いまのピンチを切り抜けられそうなことを、過去の自分の経験から探しているのだと聞いた。

ただ、当時の自分が思い出していたことといえば、友達と喋ってたとか、そんなたわいもないことで、あれを思い出したとしても、まるでピンチは切り抜けられそうになかった。

ピンチなのに探し方が下手。

そんな話。

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